スペインの首都、マドリードへ到着

スペインの首都マドリードに到着した。
日本からスペインへの直行便はなく、旅人は欧州のハブ空港で乗り継がなければいけない。
今回はアムステルダムで乗り継いだ。せっかくアムステルダムに着いたのだから寄り道したかったが、旅を急いだ。

マドリードのバラハス空港に到着した時は、既に20時を過ぎていた。
レストランが閉まる前に夕食を取らねばと一瞬思ったが、ここはスペインである。スペインでは20時にレストランが閉まるどころか、開店するのがこのくらいの時間だ。日本と同じ感覚で18時過ぎにレストランに入店しても竈に火を入れてくれない。

当り前であるが、日本とは違う外国の文化がここにはある。日本では当り前のことも、ここでは非常識ということだってある。それは日本人にとって不都合であることもある。しかし慣れてしまえば、逆にそちらの方が居心地がよくなり、日本の常識がおかしいのだと気がつく。これは初めてスペインを訪れた時に感じたことだが、今回もそのような文化や習慣の差異に期待してしまう。

実のところ、今回旅に出たのはそれが理由だ。閉塞した日本での環境に嫌気が差してきたのである。日本というより、日本社会といった方が正しい。私は日本のルールに縛られ過ぎた。それを打ち破る精神力がなかった。だから、こうして逃げるようにして日本を離れている。今、日本には私のように、日本を捨てて海外へ飛び立つ人が増えているという。日本を捨ててというより、「日本に捨てられて」と言った方が適切かもしれない。少子化の進行により、経済界では長期的な人出不足が懸念されている。にもかかわらず、日本人は今日も海外に飛び立っている。なぜなのだろう。

そんなことを考えながら、奇妙なデザインの空港内を移動していると、アムステルダムからの飛行機で隣に座っていたスペイン人が私に追い付きながら話しかけてきた。
「やぁ、今夜はマドリードに泊まるのかい?」
「えぇ、グラン・ビアの近くのホテルに泊まる予定です。」
「あの周辺は強盗が多いから気をつけて。では、よい休日を。」

いかにもスペイン人といった風貌の彼は、それだけ言って私を追い越していった。
スペインは先進国であるが、都市部では首絞め強盗が頻発している。特に日本人の被害が多いらしい。旅先はついつい楽園に見えてしまうものだが、彼の言葉で少し現実に引き戻された。犯罪も何も起こらない楽園など、この世には存在しないのだ。

入国審査はシェンゲン協定を結んでいるアムステルダムで済ませていたので、バラハス空港では簡易的にパスポートを提示するだけだった。旅行する度にいつも不安になってしまうスーツケースの受け取りも無事に終えた。